. 当時はM樹には彼氏がいて、俺にも彼女がいました。 M樹の彼氏は優柔不断なやつらしく、 シーズンスポーツ関係の仕事が夢なのはいいんだけど、 その仕事が無い時期のこととかを考えないやつだそうで、 そのあたりがM樹は不満らしく、いつもプリプリ怒ってた。 でも、俺はM樹が怒っているのは別に嫌いとかいうんじゃなくて、 まだそいつのことが好きだからだと勝手に思ってた。 . M樹は一般的に言って美人だとか、可愛い子というわけでもない。 でも、身長はまあ高く、スラっとした感じ。運動好きなので引き締まってる。 一方で、すごく勝気で、会話では常に突っ込み役にまわる。 でも、同時にすごく人懐っこいし、みんなから愛されるキャラだった。 お互い付き合ってるやつがいたから、 当時は付き合うなんて対象ではなかったけど、 今考えると、何かきっかけがあれば、いつでも好きになったと思う。 . 実際、その後に好きにはなったのだが。 M樹は彼氏とシーズンスポーツの仕事で知り合ったせいで、 俺のアルバイトを半年でやめた。でも、そのシーズンが過ぎると、 またバイトに戻ってきた。バイトのみんなは、よく戻ってきたね、 といった感じで歓迎ムードだったが、 俺はなんだかそういうのが照れくさくて、 特に喜んだ様子もみせずに、半年前と変わらない感じであしらって、 M樹が帰ってきた日を過ごしてしまった。 . M樹は裏で、「何なのよ、あれ」って言ってたみたいだけど、 お互い意識してたんだと思う。 程なくして、俺がバイトを辞め、M樹とも会うことはなくなった。 でも、バイトをやめたことで、お互いの私生活での連絡先を初めて確認しあい、 その後連絡をとりあった。 まあ、基本的には友達として。特に男女関係の話はなかった。 俺がバイトをやめて、ちょっと離れた場所にいたのもあって、 . 特に会おうという話にはならなかった。 しばらくして、そのバイト先で俺とM樹両方に親しかった Aさん(女性)という人が3人で飲もう誘ってきた。 Aさんとは飲んだことはあったが、M樹とはそのときまで飲んだことはなかった。 俺は、何も考えずにOKし、3人で渋谷で飲むことになった。 しかし、当日待ち合わせ場所に行くと、M樹しか来ていない。 おかしいな、この3人だとM樹が一番遅れるタイプなんだけど、 . と思ってM樹に話しかけると、Aさんは来れなくなったと言う。 . そのときはそっか、と言い、飲み屋に向かったが、 今考えるとはめられていたんだと思う。 M樹と二人で入ったのは、堀コタツのようなタイプの和風の居酒屋。 カウンター席で並んで座った。最初は近況を話し、彼女が彼と別れたことを聞いた。 まあ、彼氏が適当で優柔不断なやつだったから、それは当然かなと思い、 いろいろ話を聞いてやった。そのころ、俺は付き合っている子はいたものの、 . その子はその子ですごく精神的に不安定で、俺はその子と付き合うのに 疲れつつも別れられない、そんな感じだった。 同じような境遇同士ということで、お互いの愚痴話に花を咲かした。 でも、冷静に考えると一番大事なことが違っていた。 多分、あのときは酔ってたんだと思う。 M樹は彼氏とは終わってて、俺はまだ終わらす決心すらついていないこと。 M樹はAさんを使って俺にアプローチしようと考えていて、 . 俺はそんなことは全く考えていなかったこと。 . しばらくして、終電間近になってきて、 俺は時計をちらちら見始めた。彼女は何にも言わないので、 俺から「もう終電やばくない?」と言おうと思ったとき。 彼女の足が掘りコタツの中で俺の足に絡まりついてきた。 俺は止まった。正確には、俺の頭は止まってなかった。 むしろ、瞬時に、何が起きたのか、彼女は何をしたいのか、 どうして今日は2人で会うことになったのか、 彼女が俺のことをどう思っているか。 . その他のそれまでのいろんな行動が、全てがわかった気がした。 俺も自分の今までの行動が彼女を意識したものだと、そのときわかった。 直感的に今日は帰れないと思った。 彼女の顔を確認することも無く、 そのままの姿勢で話し続けた。特に話題も変わらない。 でも、完全にそれ以前とは違った状況になったのを お互い気付いていたとは思う。 そのまま終電の時間が過ぎた。 何事も無かったかのように、二人で店を出る。 . 宮益坂の方の交差点からハチ公口の交差点へと歩き、 そのガード下に差し掛かったところで、 どちらからということもなく、ごく自然に手が当たり、 手をつないだ。それからすぐに足が止まった。 カウンター席にいたせいでお互いの視線を確認していなかったのだが、 ほぼ初めてじっと見つめあった。気付いたらキスをしていた。 渋谷のガード下、人がひっきりなしに往来するのも構わず、 . お互いの舌をむさぼりあった。サラリーマンから冷やかしの声を受けても、 全然気にならなかった。 俺はM樹を抱くことをいまだに避けようと、 もう1軒飲み屋に行ったが、結局抱かずに帰ることはできなかった。 入った飲み屋ではお互いの顔すらまともにみれず、 1時間もしないうちに、出ることになった。 言葉では確認しなかったけど、二人とも気持ちは同じだっただろう。 完全にスイッチが入ってしまっていたと思う。 . 土曜の夜、ほとんど満室のラブホテル街へと向かった。 . やっと1軒のホテルに入ることができたとき、 もう何もためらうことはなかった。 部屋に入ると同時にキスをした。 お互い舌を絡めあって、気持ちを確認しあう。 コートをお互いに脱がせつつ、ベッドに転がり込む。 冬だったので、お互い手は冷たかったけど、気にする余裕は無かった。 夢中で体をむさぼる。いつもよりも愛撫は強い。 普通の状況なら、痛いって言われるくらいだったと思うけど、 . あの時はそれでちょうどよかった。 M樹は俺の肩を噛み、背中に爪をたてた。 痛く無かった。いや、痛みが痛みじゃないみたいで、正直気持ちよかった。 何もしていないのに、彼女のあそこは濡れ、俺のも限界に近かった。 フェラも無く、胸やあそこへの愛撫もほとんどなく、服を着たまま挿入。 . お互い顔を一瞬見合わせたけど、何も言わずに、 背中に手を回し、ぎゅっとくっついた。 そのまま激しく動くと、数分して程なく射精感。 興奮しきっているから、そんなにもたないようだった。 彼女ももう軽くは何度かイッてしまったようだった。 何度か小刻みに締め付けられる。そのせいで、 俺が少しゆっくりペースをゆるめようとすると、 「いいよ、きて」と言った。飲み屋を出てからほぼ初めての会話。 . M樹の足が俺の足にまた、絡まっている。 俺はペースを緩めずに動き、そのままM樹の中に出した。 俺の体がビクンビクンいってて、すごい量が出ているのがわかる。 M樹も、その間中、ぎゅっと抱きついている。 おれの動きが止まっても背中に回した手を緩めない。 . そのまま、しばらくすると、また俺のが大きくなったが、 動かさずに繋がっている感触を確かめていた。 長時間かけてゆっくり動かし、お互いの感触を確かめた。 2回目の最後は、1時間くらいして彼女が腰を少しだけ動かしたとき、 急に射精感が高まり、今度はゆっくりとした、深い射精。 どちらからともなく離れ、抱き合いながら、 そのまま寝てしまった。 朝起きても、特段変わったことはなかった。 . 飯を食って、昨日のことには触れずに会話。 でも、別れる直前、彼女は俺にこう聞いた。 これが唯一のまともな会話。 「彼女とは別れるよね?」 俺は答えられなかった。そのことを忘れていたわけではない。 でも、精神的に不安定な彼女を捨てると嘘でも言えなかった。 M樹と付き合えたら、どんなにいいだろうと思ったけど、 何にも言えなかった。優柔不断だったのは、M樹の彼だけでなく俺もだった。 . 無言の時間が続き、M樹は「わかった」と言い、帰っていった。 . 結局、最初の飲み屋でかけ違えていたボタンは、 最後まで掛け違えたままだったのだと思う。 M樹の足が俺の足に絡まったとき、 その後の無言の時間は相手が何も言わなくても、 相手の考えていることがわかっていた。 少なくとも、わかっていたつもりだった。 でも、きっと一番深いところでは違ってたんだと思う。 それは俺のせいだ。 それ以来M樹とは会っていない。 あれほど会話をしないでエッチになだれこんだのは . 後にも先にもあの時だけです。 それだけに、ちゃんと付き合えてればよかった、と今でも思います。 –終わり–. .
ソース:インターネット